- トップページ >
- 日本点字図書館付属池田輝子記念ふれる博物館の取組み|アクセシブル・ツーリズム推進事例
日本点字図書館付属池田輝子記念ふれる博物館の取組み 東京都新宿区高田馬場2丁目3-14 アイ・ブライト2階
百聞は一触にしかず
日本点字図書館「ふれる博物館」担当 渡辺明さん
高田馬場駅から早稲田大学方向に向かい、徒歩10分の所に「ふれる博物館」はあります。2階の展示室に至るルートには、点字ブロックや視覚障害者も安心して乗れる音声案内・点字表記のエレベーターが設置されており、マンションの一角にある本施設の室内は視覚障害者の移動が苦にならないようコンパクトにまとまっています。従来の美術館・博物館と異なり、立ったままの鑑賞ではなく、机の上に作品を置き、椅子に座って展示作品を「触って」鑑賞することができます。予約制となっていて毎週 水曜日・金曜日・土曜日の10時から16時に開館しています。
百聞は一見にしかずと言いますが、視覚障害にとっては「百聞は一触にしかず」という言葉があります。岩手県盛岡市で自宅を開放して、触れる博物館(現:桜井記念視覚障がい者のための手でみる博物館)を設立した、自身も視覚に障害のある桜井政太郎氏(故人)の言葉だそうです。視覚情報として、その確かさを理解することができなくても触覚(触れることで得られる)情報として、百聞は一見にしかずと同じように理解することできるという意味です。「ふれる博物館」は、触覚情報を提供することで視覚障害者の教養を高め、視覚障害者福祉の向上に寄与することを目的としています。高田馬場に在住の篤志家、池田輝子氏から場所の提供を受けて、日本点字図書館付属博物館として2018年4月に正式オープンしました。
視覚障害者だけでなく障害がない方も触れることによって、豊かな情報を得ることができる、誰もが楽しめる博物館の取組みについて、社会福祉法人日本点字図書館「ふれる博物館」担当の渡辺明さんにお話を伺いました。
日本点字図書館「ふれる博物館」担当 渡辺明さん
レオナルド・ダ・ヴィンチの壁画「最後の晩餐」のレリーフを常設展示
「最後の晩餐」のレリーフ
「ふれる博物館」は常設展示と企画展示の展示部門と視覚障害者生活用具の保存で構成されています。常設展示はレオナルド・ダ・ヴィンチの壁画「最後の晩餐」を半立体化させたレリーフ(所蔵:大内進氏(国立特別支援教育総合研究所名誉所員))を常設展示しています。このレリーフはイタリアのアンテロス美術館が製作した石膏による空間模型で、作品の構成、絵画の遠近法などを、触察で理解できます。視覚に障害が無い人も視覚による鑑賞だけでなく触察することで、より立体感を感じることができます。
「最後の晩餐」のレリーフ
企画内容に合った関連団体、企業の協力を得て年2回の企画展を開催
第15回企画展「イタリアン触堂」
開館5周年記念特別企画「江戸を体感」
企画展示は、2017年11月10日からのプレオープン企画「日本の城」から始まり、年間2回、テーマを変えて開催しています。最近の企画では2024年11月20日から2025年3月22日までイタリアをテーマとした第15回企画展「イタリアン触堂」を開催しました。触れることができる展示は大内進氏のコレクションや、企画に合った内容の関連団体、企業の協力を得て開催しています。例えば2022年11月16日から開催した「石を感じる」というテーマの第11回企画展では静岡県富士宮市の奇石博物館より、触れて楽しんでほしいと全面的な協力をいただき、手触りや音、重さ、匂いなどを感じられる、珍しい岩石約20種類をお借りして展示しました。
また、大規模改修中で休館中であった江戸東京博物館の協力を得て、「えどはく移動博物館」の一環として2023年6月14日から開館5周年記念特別企画「江戸を体感」を開催しました。江戸の歴史や文化を体感する特別企画として、浮世絵の版木(複製)や指で触ってわかるような点字や凹凸で表現した触図や、甲冑の複製、歌舞伎の鳴物などの展示とワークショップを実施しました。ワークショップでは歌舞伎で使う雨の音の効果音の装置を借りて、歌舞伎の鳴物を体験していただきました。このように、触れて、音を聞いて楽しめる展示を各方面から協力いただき、展示しています。今後も美術館や博物館が企画展を開催した際、オブジェとして作成したものがあれば、それを展示物として再利用したいと考えています。
第15回企画展「イタリアン触堂」
開館5周年記念特別企画「江戸を体感」
工夫を凝らした説明や手づくりの展示で、触れる楽しみが倍増
ヴィーナスの誕生のレリーフ
ヴィーナスの誕生の貝殻と天使の羽根
手作りの真実の口
「ふれる博物館」では来館者に工夫を凝らした展示を心掛けています。前出の「イタリアン触堂」では、サンドロ・ボッティチェリが描いた「ヴィーナスの誕生」のレリーフの横に、実物の貝殻と羽根と布、葉の付いた小枝を置きました。例えばレリーフの天使の羽根に触れるのと同時に、実物の羽根も触ってもらうことでその質感を理解していただく工夫です。
さらに、イタリアと言えば映画「ローマの休日」で、真実の口に手を入れる有名なシーンがありますが、紙粘土を使い、真実の口の実物大レプリカを手作りし、展示しています。真実の口に手を入れると口の中から消毒液が手に流れる仕組みで、大阪大学医学部附属病院のアイデアを拝借しました。
また、イタリアの地形と言えば長靴の形をしていますので、触れて理解する触地図の横に実物のブーツを置いて、実際の地形と、実物の長靴を触覚で確認してもらうよう工夫しました。
ヴィーナスの誕生のレリーフ
ヴィーナスの誕生の貝殻と天使の羽根
手作りの真実の口
誰もが楽しめる展示の普及を
触れて楽しめる展示は視覚障害者だけのものと考える必要はありません。視覚に障害が無い方が展示品に触れることで新たな発見と理解も生まれます。一般の博物館等でも、企画展に関連したモニュメントやレプリカ等触れることができる展示品がありましたら、是非「触れて楽しむコーナー」を設置してほしいと願います。触れて楽しんでいただくという工夫を重ねることで、鑑賞だけでなく触覚という新たな魅力が加わることになります。
ソーシャルメディアアカウント
誰にでも優しく、
どこへでも行ける 東京。
観光は誰にとっても自由で、どこへだって行けるはず。
「行きたいところを旅する」ということは
人生を豊かにしてくれます。
東京は、あなたが訪れてくれることを歓迎します。
伝統・歴史・文化・自然・テクノロジー、
そしてなにより笑顔に出会えることでしょう。
アクセシブル・ツーリズムを
もっと身近に、もっと楽しく。