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WHILL株式会社の取組み 東京都品川区東品川2丁目1-11 ハーバープレミアムビル2F
近距離モビリティ・サービスプロバイダーとして歩行領域の移動ソリューションに注力
法人モビリティソリューション事業本部 本部長 杉浦圭祐さん
高齢者や障がいのある方にとって、観光地やレジャー施設での長距離歩行は大きな負担となります。ご家族やご同行者と同じ速度で移動することが難しく、一緒の散策をあきらめてしまうケースも少なくありません。
電動車椅子規格の近距離モビリティ・サービスプロバイダーのWHILL株式会社(以下「WHILL社」)は、日常利用のニーズに応えるだけでなく、観光地でも「徒歩」をカバーする移動サービスが必要だと考え、免許不要で気軽に利用できる近距離モビリティWHILL(ウィル)のレンタルサービス(以下「WHILLモビリティサービス」)を提供しています。今回は、法人モビリティソリューション事業本部 本部長の杉浦圭祐さんにお話を伺いました。
法人モビリティソリューション事業本部 本部長 杉浦圭祐さん
日本全国に120以上の「WHILL SPOT」を展開
WHILLスポット 小田原城址公園
WHILLスポット あけぼの山農業
高齢社会が進むにつれ、長距離歩行が難しくなる方が増えています。WHILL社では、誰一人取り残さない移動環境の実現を目指し、WHILLモビリティサービスの展開を加速させ、東京をはじめ日本各地の観光施設や観光地に「WHILL SPOT(以下「WHILLスポット」)」の設置を増やしています。スポットは観光名所・観光エリア、テーマパーク、公園、宿泊施設、美術館・博物館、コンベンションセンター、商業施設、レンタカー・タクシーの拠点など、全国で120カ所以上に広がっています。
導入が全国的に進む背景には、高齢化・多様化の加速と、インバウンド需要が旺盛化する中で、さまざまなお客様から“移動”を巡る要望が寄せられるようになったことが大きくあります。WHILL社の調査(注)でも、足腰に不安を抱えるシニア世代の2人に1人が、自身の体力への不安や同行者に迷惑をかけてしまわないかとの遠慮から外出を諦めるほか、疲れや体力が心配で誘うのをためらってしまう家族も多くいるという実態が明らかになっていました。同時に、2024年4月の法改正で、合理的配慮が民間に対しても義務付けられたことを受け、施設やスポットなど受け入れ側としても、アクセシビリティ整備に対する機運や感度が高まってきていることが挙げられます。
注:身体的な衰えを感じている、感じ始めている全国65歳以上の男女300ss WHILL社アンケート調査 2023年8月実施
WHILLレンタルサービスでは、法人施設様やお客様からの反応から、施設や地域内の回遊性が高まり、さらなる活性化や顧客満足度の向上につながっていることがうかがえます。例えば観光エリアでは、点在する見どころへの移動手段として長距離歩行の負担を軽減し、滞在時間・体験価値を高める効果があります。特に、坂道が続く丘陵地帯の観光地ではウィルの活用が大きな助けとなります。宿泊施設では、周辺施設への移動手段として利用でき、徒歩以外の選択肢が増えることで滞在の満足度向上や利用者層の拡大へとつながっています。
WHILLスポット 小田原城址公園
WHILLスポット あけぼの山農業
ウィル開発の原点
近距離モビリティ ウィルのラインアップ
ウィルの始まりは 2009 年秋。当時、社会課題をテクノロジーで解決することを志した若者たちによるエンジニア集団が日夜、さまざまなプロダクトを作ったり研究したりしていました。転機となったのは 2010 年、ある車椅子ユーザーの「100m 先のコンビニに行くのをあきらめる」という一言でした。
車椅子利用者が直面する悪路や段差などの物理的な障壁、さらに「車椅子に乗っている人」と見られる心理的なバリア。この二つを、デザインとテクノロジーで乗り越えられると考え、「誰もが乗りたくなる」革新的なパーソナルモビリティを自ら作ることを決意したのです。
資金調達や量産のノウハウなど多くの壁を乗り越え、2014年に最初の製品「WHILL Model A」が誕生しました。「A」には WHILL のスタートという意味が込められています。発売と同時に完売し、デザイン性と新規性が評価され 2015 年のグッドデザイン大賞を受賞。自動車でもバイクでも自転車でもない、「徒歩」をカバーする新しい近距離移動手段としてウィルが世に生まれました。
近距離モビリティ ウィルのラインアップ
東京都内のWHILLスポット
WHILLスポット 羽田空港第1ターミナル
WHILLスポット 東京ドームシティ
WHILLスポットは2025年12月現在、都内では以下の施設に設置されています。
・TAKANAWA GATEWAY CITY
・麻布台ヒルズ
・東京ドームシティ
・羽田空港 第1ターミナル1階到着ロビー
・日本科学未来館
羽田空港のスポットはNPO 法人バリアフリーネットワーク会議が運営し、「羽田空港車いす・ベビーカーレンタルサービス」として提供しています。貸し出し業務を担当する榊原正博さんによると、第1ターミナル1階到着ロビー中央に位置していることもあり、海外からの訪日客の利用が多く、4台のウィルを配置。レンタル期間は 3~4日が多く、中には2週間利用する方もいます。日本到着後すぐ借りられる利便性が好評とのことです。
また麻布台ヒルズは「Green & Wellness」をテーマとした複合施設で、自然の地形を生かした高低差が特徴です。ウィルの導入により、特にシニアや長距離歩行が難しい方にとって移動が大幅に楽となり、施設内の回遊性も高まっています。
WHILLスポット 羽田空港第1ターミナル
WHILLスポット 東京ドームシティ
「歩きづらさがあるなら近距離モビリティを使う」文化を目指して
近距離モビリティは徒歩移動を支援する便利な手段ですが、階段など物理的に対応できない場所もあり、路面インフラの整備拡充も同時に必要となってきます。また WHILL スポットの導入では、機体のレンタルと保険、アフターサポート、機体管理システムなどを含んだパッケージが用意されています。これは導入施設側が安心して運用し続けられるための体制ではありますが、費用が必要となってきます。施設の判断により実際にウィルを利用するお客様への提供形態には有料・無料の違いがありますが、「利便性のコストを誰が負担するか」は今後の課題です。導入時には、来園・来場したお客様が見つけやすい、借りやすい場所にウィルの貸出場所を配備することも検討いただく必要があります。また、施設HP上でも、バリアフリー設備やきめ細かなサービスとしてウィルの情報を分かりやすく記載する対応も併せてお願いしています。
ツーリズムにおける近距離モビリティの利便性はまだ十分に認知されていない現状があります。利用されている様子を見た人からは「事前に知っていたら親を連れてきたのに」「もっと早く気づいていれば使ったのに」という声が多く聞かれるので、先述のウィル導入時にかかる対応は重要となってきます。さらに、「こうした機器を使うのは恥ずかしい」という心理的抵抗を持つ方もいます。WHILL社では、全国にスポットを広げることで、「歩きづらさを感じたら、目的地での時間を存分に楽しむために、また体力を温存するために、モビリティを使う」という文化を根付かせていきたいです。
東京都には、大型の屋外庭園や動物園、家族3世代などで訪れたいと思う魅力あるスポットが多いです。実際、お客様からも上野動物園や葛西臨海公園などでウィルの導入を求める声が多数寄せられており、こうしたお声も受けて春以降も都内の施設で導入を控えています。ウィルはインバウンドのお客様にも広く利用されていますが、WHILLモビリティサービスがこうした施設やスポットでますます広がっていくことで、老若男女・国籍・身体状況などに関係なく誰もが観光しやすい世界的なアクセシブルな都市としての東京都のプレゼンス向上に貢献できると考えています。






