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- 東京空港交通株式会社の取組み|アクセシブル・ツーリズム推進事例
東京空港交通株式会社の取組み 東京都中央区日本橋箱崎町42-1
リフト付リムジンバス(全景)
エレベーター付リムジンバス(全景)
東京都内および近郊から成田空港・羽田空港へ向かうエアポートリムジンバスを運行しているのが、東京空港交通株式会社です。1日に約870本ものバスを運行しており、空港アクセスを支える重要な交通インフラとして知られています。
同社では近年、車いすユーザーをはじめ、高齢者や身体の不自由な方など、誰もが安心して利用できる「アクセシブル・ツーリズム」の実現に向けた取り組みを進めています。現在、乗合バスや貸切バスには、リフト付きバス14台、エレベーター付きバス11台が導入されています。 今回は同社の野川さん、小堀さん、伊東さんにお話を伺いました。
リフト付リムジンバス(全景)
エレベーター付リムジンバス(全景)
「Friendly for All」―まずは心のバリアフリーから
同社のアクセシビリティへの取り組みは、1998年に掲げられた「Friendly(優しく、親切で、礼儀正しく)」という理念に始まります。「すべての思いがお客様に届くように」をモットーに、まずは接遇やサービスなどソフト面の充実に力を入れてきました。
2016年から乗務員や旅客係員を含め全役職員にサービス介助基礎検定の受講を開始しました。さらに、多言語表示の車内案内機器、自動券売機、バス停ポールの設置など、外国人旅行者にも分かりやすい環境づくりを進めてきました。
2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けては、高齢者や障害のある方など、よりサポートを必要とする方々の立場を理解するための人材育成や研修を重ね、「Friendly for All」の理念に基づくサービス向上に会社全体で取り組んできました。
オリンピック・パラリンピックを契機にリフト付きバスの導入
リフト付リムジンバス(リフト下降時)
リフト付リムジンバス(リフト上昇時)
アクセシビリティへの取り組みをさらに加速させたのが、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催決定でした。それまでリムジンバスの主な役割は、大きな荷物を持った利用者を空港までダイレクトにお運びすることでした。しかし大会開催により、車いすユーザーなど身体に障害のある多くの方が航空機を利用して日本を訪れることが予想されました。
こうした状況を受け、同社は2016年3月に国と都の支援によるリフト付きバス1台の実証導入に続いて、東京都が2016年に「観光バスバリアフリー化支援補助金」を創設したのをキッカケに、この制度を活用し、2016年にリフト付きバス1台、2017年にさらに2台を導入しました。
リフト付きバスは、車いすのまま安全に乗車できるという大きな利点があり、車いす利用者がいない場合には通常の客席として使用できる柔軟性もあります。ただし、リフトの昇降には1回あたり約5~8分かかることや、バス横にリフトを展開するためのスペースが必要になり、車いすの客室での固定に時間と手間を要する、リフト使用時に雨風が客室に入る、一般の屋根付き停留所ではリフトが使用できない、また車外での昇降に恐怖感をもたれるリフト利用者もいらっしゃるなど、運用面での課題もありました。
これらの課題を少しでも軽減するため、リフト展張が可能で雨風の影響が少ない停留所の調査と選定、更には車いすのお客さまの誘導や固定作業を円滑に行えるよう旅客係員に対する研修も実施しました。 また、車外での昇降に対する不安や恐怖感を軽減できるよう、乗降時には丁寧な声かけを行い、安心して利用いただけるよう配慮しました。
リフト付リムジンバス(リフト下降時)
リフト付リムジンバス(リフト上昇時)
エレベーター付きバスの共同開発
エレベーター付リムジンバス(エレベーター乗降口)
エレベーター付リムジンバス(エレベーター上昇時)
エレベーター付リムジンバス(車いす固定位置)
こうした課題を解決するため、2015年に三菱ふそうトラック・バス株式会社から新しい構想が持ちかけられました。それが、車内エレベーターを備えたバスの開発でした。この車両は、スロープを使って乗車し、車内に設置されたエレベーターで客室フロアと昇降する仕組みとなっています。雨天時でも利用しやすく、荷物室も確保でき、車外に大きなスペースを必要とせず、車いすの固定が容易な装置を搭載している点も特徴です。
同社は三菱ふそうと共同開発に取り組み、2017年に試作車が完成し、車いすユーザーや当事者団体、現場の職員の意見を取り入れながら改良を重ね、2018年に量産型エレベーター付きバスが完成しました。 座席数は通常より6席ほど減りますが、乗降時間の短縮や天候の影響を受けにくい点が評価され、2019年には7台を導入しました。現在ではリフト付きバスと合わせてアクセシブル車両の運行体制が整っています。
現在、コロナ禍の減便と乗務員・旅客係員の減少の影響からまだ十分回復したとは言えない中、エレベーター付きバスは羽田空港~成田空港間で1日3往復運行されています。なお、導入当時の費用は通常車両との差額が補助対象となり当時(2018年時点)でもリフト付きバスは約400万円、エレベーター付きバスは約800万円ほどの追加費用が必要でした。
エレベーター付リムジンバス
(エレベーター乗降口)
エレベーター付リムジンバス
(エレベーター上昇時)
エレベーター付リムジンバス
(車いす固定位置)
導入後の評価と課題
同社の取り組みは、他のバス事業者の参考事例ともなり、エレベーター付バスによる導入可能停留所の拡大、路線やメーカーの選択肢増加、加えて乗合での運用をより意識した機能などが事業者・ユーザー共に好意的に評価され、利用者からは「随所に細かい配慮があり安心して乗降できる」、「普段利用するバスより見晴らしがよく旅行が楽しくなる」といった声があり、全国の空港連絡バスや高速バスなどでも導入が進んでいます。また他メーカーでも認識が進み、改良に力を入れるようになってきました。 なお限られた車内スペースのため、同社ではエレベーター付・リフト付ともに利用者へ事前予約を推奨していますが、「当日は安心して利用できる」との声もあります。
一方、海外からの利用者はまだ多いとは言えず、周知不足が課題の一つと考えられています。 さらにコロナ禍では、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の延期や利用者の減少により経営的にも大きな影響を受け、乗務員の離職など厳しい状況も経験しました。それでも現在は徐々に回復し、新たなスタートラインに立ったところです。
現在は、運行ダイヤの工夫や利用促進策、乗務員教育や労働環境の整備など、これらのバスをより効果的に活用する方法について検討を重ねています。安全運行に直結する取り組みであるため、常に緊張感を持って運行にあたっています。
今後の展望
同社では、「ハード面の技術だけではなく心のバリアフリーが重要である」と考えています。リフトやエレベーターを扱える現場の職員だけに頼るのではなく、すべての職員が利用者の要望に応えられる体制づくりが必要だといいます。利用者の立場に立って考え、気持ちよくサービスを利用していただくための工夫を重ねること。それこそがユニバーサルなサービスにつながり、安全で楽しい旅につながると同社は考えています。
コロナ禍で減少した利用者も徐々に戻りつつあります。今後もインターネットによる情報発信やその他様々な工夫により認知を広げ、利用実績の拡大を目指していく方針です。さらに地方空港などとの情報交換も進めながら、車いす利用者・健常者にかかわらずより多くの方々により多くのご乗車の機会を提供し、誰もが利用しやすい空港アクセスの実現に取り組んでいきます。






